Draft

※草案のため、登場人物の名前が連載作品とは異なる場合もございますが、あえて訂正せず草案をそのまま掲載しております。

戸越公園 園内(朝)

ジャージ姿でジョギングする神御蔵、後から自転車に乗った吉塚がはっぱを掛ける。

  • 吉塚
  • 「後2周、おら、もっとスピード出せ!」
  • 神御蔵
  • 「ハッ、ハッ」


  • 公園に設置された水飲み場で顔を洗う神御蔵、その耳に交番で交わされる会話が入って来る。

    • 若い警察官
    • 「―――またぁ?お婆ちゃんさぁ、いい加減場所覚えようよ!同じバス停、俺は何回教えてあげた?警察官も暇じゃないんだしさ、ね」
    • 老婆
    • 「すみません………すみません………」

    何度も頭を下げて歩き出すお婆さん。

    • 神御蔵
    • 「(見つめて)」
    • 吉塚
    • 「いつまで油売ってんだ、行くぞ!」
    • 神御蔵
    • 「はい!」

    とぼとぼと歩くお婆さんを気にしながらも、反対に向かって走る神御蔵―――


大和ジム 外

若い選手が辺りを伺っている。 そこへジョギングから帰って来る吉塚と神御蔵。

  • 選手
  • 「あ、先輩!大変です!」
  • 神御蔵
  • 「どうした?」
  • 選手
  • 「警察が来てる!」
  • 吉塚
  • 「警察?」
  • 神御蔵
  • 「やっぱり会長か………。あの顔は只者の顔じゃないっすもんね」
  • 吉塚
  • 「バカ!」


同 ジム内

選手達、階段に溜まってみんな上を見ている。

  • 神御蔵
  • 「(声)えーっ!俺が警官に!?」

ギョッとする選手達。


同 会長室 内

坂口、吉塚、神御蔵の前に座っている男、香椎である。

  • 神御蔵
  • 「何言ってるんすか?俺、こう見えてもプロボクサーっすよ」
  • 坂口
  • 「そいつは知らなんだ」
  • 神御蔵
  • 「会長!」
  • 香椎
  • 「わかってる。そこをなんとかしてもらいたくて頼みに来た」
  • 神御蔵
  • 「ハハハ、無理っすよ!俺、頭悪いし。第一試験なんか受けたって絶対落ちるに決まってるっすから」
  • 吉塚
  • 「俺もそう思う………」
  • 神御蔵
  • 「………」
  • 香椎
  • 「(紙片を差し出し)ちょっとここを読んでくれないか」

香椎が指した部分、そこには警視庁が新たに加えた採用の一文がある。

  • 神御蔵
  • 「資格経………経………」
  • 吉塚
  • 「貸せ!(奪い取って)資格経歴等の評定………。警察庁では―――」

    • Na
    • 『警察官採用試験に新たな一文を追記する。
      【資格経歴等の評定】
      一芸に秀でた者の資格・経歴を採点に加え、柔道、剣道、空手、相撲などのスポーツ経験者から英検や教員免許の資格まで幅広い人材をもとめ、固定化した警察官像を打破するものとする』

  • 香椎
  • 「警察の採用に何か人より秀でたもの、それを試験の採点に加えるという事です。
    (神御蔵を見て)私はこの一ヶ月、君の事を色々と調べさせてもらった。
    そして出した結論は―――、君を是非ともうち(警察)に欲しいという事だ」
  • 吉塚
  • 「!?」
  • 坂口
  • 「!?」
  • 神御蔵
  • 「(ニカッと笑って)吉塚さん、会長、今の聞きました?(香椎に)うわぁ、めっちゃ嬉しいっす!ありがとうございます!俺、そんな事言われたの初めてっすよ!ボクシングでは毎回会長に「能無し、縁切りや、はよ辞めろ!」と言われてますから」
  • 坂口
  • 「(憮然として)当然やろ」
  • 香椎
  • 「じゃあ――――」
  • 神御蔵
  • 「(首を振って)ボクシングは俺のすべてっす。これ失くすのは絶対あり得ません」
  • 香椎
  • 「(じっと見つめて)絶対か………」
  • 神御蔵
  • 「(じっと見返して)絶対です………」
  • 香椎
  • 「そうか………(坂口達に)お邪魔いたしました」

立ち上がる香椎に、

  • 神御蔵
  • 「あの………、また次の試合観に来て下さい」
  • 坂口
  • 「次があったらな………」
  • 神御蔵
  • 「(名刺を見て)ここにチケット送りますから!」
  • 香椎
  • 「(頷いて)ありがとう………」

会長室を出て行く香椎。


路上

煙草に火をつけ、ジムを見上げる香椎、

  • 神御蔵
  • 「(首を振って)ボクシングは俺のすべてっす。これ失くすのは絶対あり得ません」

ポケットから神御蔵の履歴を取り出し、破る香椎、

  • 香椎
  • 「頑張れよ………」

ゴミ箱に破った紙片を入れて歩き出す。


戸越公園 園内

【一ヵ月後―――】
ジャージ姿でジョギングする神御蔵、
ふと見ると―――、ベンチに座っているお婆さんがいる。俯いて力のない顔………。

  • 老婆
  • 「すみません………すみません………」

何度も頭を下げて歩き出すお婆さん。

  • 神御蔵
  • 「またあのお婆ちゃんだ………」

お婆さんのもとへ走り出す。

  • 神御蔵
  • 「あの………、もしかしてバス停行きたいとか?」
  • 老婆
  • 「(見て)………」
  • 神御蔵
  • 「前も交番で話してたの、聞こえてたから」
  • 老婆
  • 「歳ですかねぇ………何度聞いても覚えられなくて………」
  • 神御蔵
  • 「(笑って)うっす!一緒に行きましょう」

屈託のない神御蔵の笑顔を見つめる老婆、

  • 老婆
  • 「ありがとう………」
  • 神御蔵
  • 「俺、神御蔵勇太郎って言います。お婆ちゃんは?」

老婆の手を引いて歩き出す神御蔵――――。


路上
  • バス停にお婆さんを送り届ける神御蔵、
    丁度バスが走って来る。

    • 神御蔵
    • 「ナイスタイミング!」
    • 老婆
    • 「ありがとうございます。これはお礼………」
    • 神御蔵
    • 「いいっすよ、お礼なんて―――」

    巾着袋から差し出された飴が神御蔵の手に乗せられる。
    カンロ飴である。

    走り去るバスに手を振って、

    • 神御蔵
    • 「(手を広げ、カンロ飴を見つめて)懐かしいな………」


神御蔵の回想

お婆ちゃん子だった神御蔵、いじめられて帰ってくると、転んで泣くと、きまってカンロ飴をくれて励ましてくれた。

  • お婆ちゃん
  • 「この飴はね、お前の痛いのや悔しいのや哀しいのをみんな吸い取ってくれる。だから、もう泣くんじゃないよ」

飴を舐める神御蔵、ほんのりとした甘さが口の中に広がって、泣くのをやめる。

お葬式、お婆ちゃんの遺影を見つめてぼんやりしている幼い神御蔵。
お焼香の時、そっとカンロ飴を仏前に備える………。


路上

  • 神御蔵
  • 「減量中だけど………ま、いっか!(カンロ飴を頬張り)うわぁ、味変わってねぇ………」


警察庁警備局 公安部会議室

ドアが開いて、

  • 香椎
  • 「失礼します」

スーツ姿の香椎が姿を見せる。

  • 公安部長
  • 「本日11:20、JR新宿駅構内で無差別殺傷事件が発生した。犯人は1人、通行人を刺して逃走中だ。近隣に緊急警戒配備をしいたがまだ押さえられていない。駅構内に潜伏している可能性もあると思われる。警視庁から「S」2隊が出動した………」
  • 香椎
  • 「「S」が2隊………」
  • 公安部長
  • 「絶好の機会だ。「S」の動きをその目で見て来い。現状では何が出来て何が出来ないのか、それをしっかりと見極めて来い。そして新しい部隊作りに生かせ………」
  • 香椎
  • 「直ちに現場に向います」


車内
  • 香椎の乗る車両に、次々と情報が飛び込んで来る。

    • 無線
    • 「―――人着は黒っぽいパーカー、ジーパン、黄色いスニーカー掃き」
    • 無線
    • 「現在のところ18人死傷。逃走経路は南口方面と思われる」
    • 無線
    • 「受傷事故注意、受傷事故注意。拳銃の携帯を許可する」
    • 公安部長
    • 「現状では何が出来て何が出来ないのか、それをしっかりと見極めて来い。そして新しい部隊作りに生かせ………」
    • 香椎
    • 「さて………」

    鋭い目で前を見つめる香椎、視線の先には騒然とした新宿駅が見える――――。


新宿駅 構内
  • 野次馬でごった返す構内、床には目を背けたくなるような鮮血が床や壁に飛び散っている。
    その中には血の付いた子供用の靴もある………。

    • 香椎
    • 「(見つめて)惨いな………」

    規制線が張られ、大量の警察官が動き回っている。

    • 香椎
    • 「これだけの数で探しても見つからんか………」


南口に向かって構内を歩く香椎、やがて準備中の張り紙が貼られた喫茶店に目が止まり、


同構内 喫茶店「ファロン」

ドアを開けて中に入る香椎、

  • 香椎
  • 「こんにちは」

返事はない―――。
店内を進み、奥の方へ。トイレの前で足を止める香椎、トイレの中から血が染み出している………。

  • 香椎
  • 「………」


新宿駅 外

辺りを見回しながら携帯電話を掛ける香椎、

  • 香椎
  • 「香椎です。犯人は着衣を着替えています。既に、人混みに紛れて構内から外へ出た可能性もあります。人相にのみ注意するよう連絡して下さい」

電話を切ると、路上に立ち止まる香椎、

  • 香椎
  • 「こっちに行くとオフィス街、こっちに行くと………」

香椎の見つめる先には森がある。


戸越公園 園内(夕方)

何時の間にか日が傾き、木立の影が長く伸びている。

  • 神御蔵
  • 「お婆ちゃん遅いなぁ………。このお礼言いたいんだけど………」

神御蔵の手には新しいカンロ飴の袋が握られている。
その時――――、
「グッ」とくぐもったような声何かの倒れるような物音がして………、

  • 神御蔵
  • 「ん………?」

木陰の向こう、白いシャツに綿パンを履いた男が座り込み、何かを必死で探している。
男が手を入れているのは巾着袋、

  • 神御蔵
  • 「あれは………」
  • 老婆
  • 「これはお礼です………」

巾着袋から差し出された飴が神御蔵の手に乗せられる。

  • 神御蔵
  • 「あれはお婆ちゃんの………」

ゆっくりと近づいて行く神御蔵。


  • 男の側に倒れているお婆ちゃん、路面には血が広がっている。

    • 神御蔵
    • 「お婆ちゃん!」

    驚く男、サッとナイフを翳して、

    • 神御蔵
    • 「(男を睨み)そいつで刺したんか………。そいつでお婆ちゃんを刺したんか!!」

    • 「(ニヤニヤして)だったらどうした………ケケケ」

    正気とは思えない眼が神御蔵を見つめる。


  • 神御蔵
  • 「(ハッとして)あんた………東田っすか………?」

刃物男、それは半年前、東京ドームで戦った相手――――、
巨体と巨体が交差し、岩をも砕きそうな重たいパンチが相手目掛けて繰り出される。

  • ミクラス
  • 「フン!フン!」
  • 東田
  • 「ハァ、ハァッ!」

  • 神御蔵
  • 「東田っすよね………、俺っすよ、ミクラスっす!」
  • 東田
  • 「ミクラスぅ………?」

殺気だった目が次第に落ち着き、人間の目へと変化して………、

  • 東田
  • 「ミクラス………、ほんとだ………。何やってんだお前?」
  • 神御蔵
  • 「何って………」
  • 老婆
  • 「うう………」
  • 神御蔵
  • 「お婆ちゃん!」

駆け寄る神御蔵、

  • 東田
  • 「動くんじゃねぇよよよ!」
  • 神御蔵
  • 「(無視して)お婆ちゃん、しっかり………。(東田に)早く携帯で救急車呼ぶっす!」
  • 東田
  • 「ほっとけよ、どうせ死んじまうって………、へへへ………」
  • 神御蔵
  • 「(傷口を押さえながら)すみませ―――ん!誰か救急車呼んで下さい!」

何事かとこちらを見る通行人に、

  • 東田
  • 「見るな!ブッ殺すぞ!」

「キャーッ!」と叫んで走り去って行く主婦達。

  • 東田
  • 「ギャハハハ!」
  • 神御蔵
  • 『(東田を見つめて)薬………』


公園を見回しながら歩いて来る香椎、
目の前に血相を変えて走って来る主婦達を見て、

  • 香椎
  • 「(警察手帳を見せて)何かあったんですか?」

  • 主婦
  • 「向こうで………大きなナイフを持った人が―――」

走り出す香椎――――。


  • 神御蔵
  • 「あの子はどうしたっすか………?」
  • 東田
  • 「あの子………?」

  • 男の子
  • 「パパ、頑張れ!」

  • 神御蔵
  • 「あん時リングサイドで応援してた、息子っすよ!」
  • 東田
  • 「あぁ………、あれね、売った………」
  • 神御蔵
  • 「売った………?」
  • 東田
  • 「しゃーないだろう………、金が無くなったんだから」
  • 神御蔵
  • 「薬代欲しさにあの子を売ったんすか………?」
  • 東田
  • 「女房も売った。家も売った。子供も売った。売るもんなくなったから、人から頂くしかねぇし」
  • 神御蔵
  • 「だからお婆ちゃんを………」

御蔵の全身に怒りが込み上げて来る。

  • 神御蔵
  • 「(老婆に)すぐ済むからちょっと待っててね………」

立ち上がる神御蔵、全身から闘気が放たれ、自然に腕が上がり、ファイティングポーズを取る。

  • 東田
  • 「(笑って」俺ともう一度やるってか?」
  • 神御蔵
  • 「やるっす………」


2人の男が向かい合っているのが見える。ナイフを翳した男とファイティングポーズの男、

  • 香椎
  • 『(見つめて)神御蔵か………!?』
  • 香椎
  • 「(大声)神御蔵!そいつから離れろ!」

拳銃を取り出す香椎、東田に向けて、

  • 香椎
  • 「神御蔵!」


  • 東田
  • 「………ぉぉぉぉ!!!!」

繰り出される刃物を冷静に見つめる神御蔵、フットワーク軽く足を使い出すと紙一重で刃物を見切りながら、東田の攻撃を交わしていく。

  • 神御蔵
  • 「フン、フンッ!」

ついに神御蔵がナイフを避け東田の懐に飛び込んで――――、

  • 東田
  • 「!?」

電光石火のごとく繰り出された神御蔵の左ストレートが東田の顔面を捉える。
「メキッ!」
骨の潰れるような鈍い音がして………、地面にもんどりうって倒れる東田。

その光景を唖然として見つめる香椎――――。 


荏原総合病院 病室(後日)
  • 一命を取り留めたお婆ちゃんのお見舞いに訪れている神御蔵、
    お婆ちゃんの家族から感謝を受け、照れまくる………。

    • 神御蔵
    • 「―――お婆ちゃん、これ」

    カンロ飴が沢山入った袋を手渡す神御蔵、

    • 神御蔵
    • 「お見舞い………。いや、お礼っす………。早く元気になって下さい」
    • 老婆
    • 「ありがとうね………」

    くしゃくしゃに笑って頷く神御蔵。


病院外 路上

  • 香椎
  • 「(声)神御蔵くん」
  • 神御蔵
  • 「(振り向いて)あ………、どうも………」
  • 香椎
  • 「東田な、昨日目が覚めたそうだ。すっかり薬が抜けて、別人のようだったそうだ」


某病室

目覚める東田、カーテンを開け、朝の日差しをいっぱいに浴びる。

  • 東田
  • 「(看護婦に)おはようございます………」

清々しいその横顔―――。


病院外 路上
    • 香椎
    • 「君の拳は邪気を祓うのかもしれんな………」
    • 神御蔵
    • 「邪気を………祓う………」
    • 香椎
    • 「君はあの時の試合で、最後に東田を打たなかった。いや、打てなかった。
      東田の子供が見えたからじゃないのか?」
    • 神御蔵
    • 「(驚いて)どうしてそれを………」
    • 香椎
    • 「刃物や拳銃じゃ伝わらない何かが君の拳にはある………。来てくれないか、私と一緒に」
    • 神御蔵
    • 「(香椎を見つめて)」
    • 香椎
    • 「今、この日本に、その拳が必要なんだ………」
    • 神御蔵
    • 『俺の拳が――――』

    ――――終

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